
「使えない」部下を使う事こそが上司の仕事だ
私も少しだけ外回りをすることがあるのですが、部下を使う立場の人が、「この部下は使えない」などと言っているのを聞く事があります。
しかし、企業では大後の場合、自分が経営者ではない限り、その部下を使わざるを得ません。
日本では名ばかり管理職の名のもとにサービス残業が強制されていますが、管理職といえど、解雇権は全くありませんし、それが故にパワハラなどの目に見えない嫌がらせが多くをしている事も事実でしょう。
時代は変わった 人材を作ることが必要とされる
今の30代後半までの人であれば、日本の景気はどん底であり、そして企業は人を応募さえすれば、いつでも人は来る、などの幻想を抱いている印象があるでしょう。しかし、その幻想はとっくの昔に誤った認識となっています。
無秩序な派遣労働者の拡大により、当時の若者が非正規の労働を強制させられ、その結果として労働力の再生産ができなくなった事で、労働人口自体が減少しました。
また、団塊の世代の大量退職により、その穴埋めをバイトでさせようとした結果、まともな人材が存在しなくなりました。
もはや企業は、人材を確保する事自体が大変な時代となりつつあります。
これまで企業は、ある意味では法律を守らなくても良く、人材を使い捨てにできる、企業のわがまま放題が放置されてきた、そんなボーナスステージが続いてきました。
しかしそのボーナスステージのツケを払う期間がついに到来したのです。
「嫌なら辞めろ」は企業に対し吐き捨てられる言葉となった
一昔前であれば、企業の圧倒的な優位性を利用し、企業は社員に対し、「嫌ならやめろ、代わりはいくらでも存在する」との暴言を吐く事ができましたが。
しかし、それが今となっては企業に向って帰ってきているのです。つまり、企業は雇用に対して、根本的に考えを改めざるを得ない時期に来ているのです。
余談となりますが、外国人労働者の導入が解禁されたところで、中小企業にとって、単純労働であれば外国人労働者は役に立つのかもしれません。
しかし、技術的な部分、経理的な部分、総務的な部分、営業的な部分、そしてコミニュケーション技術が必要とされる部分、それらの多くの場合、外国人労働者への置き換えは不可能であると考えます。
この国の政治家たちは外国人労働者を導入することによって、産業界に対して利益を与え、それらの産業界から自分が政治献金を受け取る事ができれば、この国の社会が衰退しようが弱体化しようが知ったことではない、との考えなのでしょう。
使えない人材をどうするか
少なくとも本人にやる気があり、それの上で、やる気が空回りをしているのであれば、そのやる気を適切な方向に持って行く事が上司の役目です。
たとえば、マニュアルを上司の自分が作り、そのマニュアル通りに仕事をしてください、でも良いと思いますし、また、自分が徹底的にその部下の尻拭いをする覚悟があるのであれば、その部下に自分の思う方法で仕事をさせ、その後にダメ出し、もしくは労働効率の改善を促していく方法もあるでしょう。
また、業務の細分化という視点も重要ではないでしょうか。現在、一人が全て行なっている作業を、どこまで他者に行わせることができるか、そのようなプロセス的な見直しも必要となります。
ただ、悲しいことに、これらの「人を育てるスキル」が、少なくとも中小企業においては、全く失われている、もしくはそれが誤った根性主義に彩られているのが現在の多くの中小企業です。
とはいえ、そのような企業は遅かれ早かれ消滅していく事でしょう。
今後、「使えない」部下を適切に使う事は、企業の存続にとって、極めて重要な課題になります。使えない部下だから切り捨てる、と考えるのではなく、自分が部下を育てる事のできる機会を与えられた、と考え、部下のやる気を引き出していく考えに今すぐに改めるべき時期が来ているのです。
本来、そのような課題はもっと早くから議論されていなければならなかったのですが。
とはいえ、劣悪な労働環境の放置の最後のツケとして少子高齢化、労働人口力不足が生じ、今更、どうしようもない状態で人材を育てろ、と言われている企業の担当者の方には大いに同情いたします。
最低限、法律を守る事は企業の全ての根本である
無論、部下のやる気云々の以前に、まずサービス残業をさせない、パワハラをしない、適度な休暇時間を与える。それは最低限、企業が行うべき事ですが。
企業が求められる最低限の事ができていないにも関わらず、使える人材が来ないなどと主張するのは、寝言に過ぎません。
それは良い悪いの問題ではなく、企業が労働基準法を守らない行為は企業犯罪です。犯罪を行い、肯定する企業に未来はありません。
とはいえ、残念ながら、そのように、まともな労働環境がないにも関わらず、良い人材が来ない、などと勘違いしている企業が多数存在するのですが。
それは今まで労働基準法などの違反を見て見ぬふりをしてきた行政の問題であり、行政が見て見ぬふりをすることが当たり前であることに慣れきってしまった企業、特に中小企業における悲劇とも言えるのですが。
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